文殊くん5

文殊くん5

25:仏が死ねい!と死の宣告を行なってる。本当なのか?僕は耳を疑った。でも彼は常にやって来る病魔から信者をこうやって護っているんだ、だからきっと間違いじゃない。愛からくる厳しさみたいなものか。「今出て来ないものは地獄行きぞ、さあ早くい出て仏に頭を撫でられよ」(今度は恫喝か、仏法は厳しいのである)


26:すると如来は先程の抜け殻達を集めて奥のものを掻き出すような仕草をしている。こうして2、3時間くらいは経っただろうか、すると如来は僕に湯船に浸かってこいと言った。凄いものを見たな。
確かにさすがに少し冷えてきていた。
何年ぶりに浸かるだろう、いつもは迷惑がかかるので湯船にはいかないようにしていた。僕は体を摩ってみた。いつもはガサガサの僕の肌がツルツルになっていた。僕は湯船に向かった。久しぶりの湯船に浸かろうと足を入れたが、熱くて入れない。やむなく腰まで浸かりじっとしていた。でもやっぱりそれだと上半身が温まらない。そこで周りを見渡すと一人用の湯船が3つ並んでいた。寝そべって入るアメリカのバスタブみたいなやつである。

27:僕はそれに浸かることにした。ちょうどいい温度だ。(ふぅ、これで全身ゆっくり入れるぞ) 時間はいくらでもあるので気にすることはない。
(あれ?もしかして文殊くん 全部分かって、あえて無限の時間を創り出したのか)
(テレビが壊れたのも、届かないのも、こうゆう状態を創り出すために全部彼が仕掛けた事だったとしたら) そういう思いに辿り着いた時、僕はふと涙が出そうになってきた。でもこんなとこで泣くわけにもいかないので、僕は湯船を出てまた自分の洗い場に戻った。すると如来は今度は顔を両手で撫で始めた。(まだ続くのかよ) 正直僕はそう思った。でも30分くらいしたら上がっていいと言った。(ふぅ、あとはゆっくりくつろごう)「あと足には歩き方を思い出せ!と命じておいた、心配するな」と最後に如来は言った。
頭を拭きながら僕は気になってることを文殊くんに聞いてみた。「そういえば僕、南無阿弥陀仏も唱えてるけど、あれ大丈夫なの?」すると「うーん、君の場合は阿弥陀仏の力に対して期待してるだけでしょ。浄土宗や浄土新宗を信仰しているわけじゃないし、別に大丈夫じゃない」「君が薬師如来阿弥陀如来、観世音菩薩や僕の名を唱えてるのもその力というか働きに対してでしょ、それらは本末究境してすべて南無妙法蓮華経の中に含まれてるから別にいいんじゃない」 だそうです。

28:(やったー!テレビだ!)僕は叫びたかったがおかしいやつと思われるのも嫌なので、何も感じてませんよという顔で普通にソファに座った。当たり前か。めっちゃ懐かしい夕方のニュースが流れている。嬉しくてたまらない。普通ならスマホをいじりながらのながら見だが、今日はただのニュースを食い入るように堪能した。この後は食事だ。食堂みたいなとこがあって、ここにもテレビが置いてあった。僕の顔がニヤけているのが自分でも分かる。僕は迷わずテレビの前の席を陣取った。ちょうど19:00からのバラエティーが始まっていた。2時間ほど堪能し僕は帰りのバスに乗り込んだ。

29:最高の1日だったよ。ありがとう文殊くん、バスの手配からボタン式信号機の調整まで、何から何まで全部最高だったよ。自転車で信号渡る時も、僕が着く少し前におばちゃんが押しといてくれて、僕はノンブレーキでそのまま行けたり、バス停に着いた瞬間にバスがやって来たり、全部君がやってくれたんでしょ、分かってるよ。僕は心地よく眠りに就いた。
次の日朝、今僕はガストで朝定食を食べながらこれを書き上げている。優雅だ。朝からレストランで朝食とは。たかがガストなので美しい景色が広がっているわけでもないが、やっぱり家に居たくないのだ。それにテレビが来てしまったらもう、この事について書くことはきっとないだろうと思ったからだ。

30:僕が以前スーパーの弁当売り場の前で、高い方にしようか、やっぱり安いほうにしとこうかと迷っていた時に君が、「好きな方を食べなさい!お金なんかいくらでもあるんだから。気にしないで好きな方を食べなさい」でも、とまだ迷っている僕に「お金の心配なんてしなくていい、お金の心配してる仏なんて見たことないでしょ」(確かに)「君は本当は使い切れないくらいの財宝を持っているんだよ。地球丸ごと一個でも買えるくらいの」「でも地球丸ごと一個買うならもう買わなくていいよね。本当は何個でも買えるくらいに君は持っているんだよ、そこからいくらでも取り出せばいい」って分かるような分からない話を思い出して、今日は安心してレストランの朝定食を食べている。
食後のコーヒーを飲みながらなんとか昼までには書き上げられそうだ。
うちに戻るとポータブルテレビが届いていた。ありがとう文殊くん。

この話の続きはまたいつか
ありがとうございました。